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佐賀県佐賀市鍋島5丁目1番1号

研究内容

私達の研究室では、アレルギートランスレーショナルリサーチプレシジョン・メディシンをキーワードとして研究を行っています。

アレルギー疾患に罹患した患者さんの数は世界的に増えています。主要なアレルギー疾患として、喘息アトピー性皮膚炎アレルギー性鼻炎花粉症を含む)があげられます。我が国における喘息への罹患率は小児で6-8%、成人で3-4%であり、全部で800万人もの患者さんがいると言われています。さらに、全世界では3億人が罹患していると言われています。アトピー性皮膚炎については、我が国での医療施設受診者数は40万人と推定されていますが、20歳以下の10%もの若年者が罹患していると言われています。また、アレルギー性鼻炎の罹患率は大変高く、20-60歳全体の40%にのぼると推定されています。花粉症に限っても全人口の25%(3000万人)になります。このように数多くの患者さんが苦しんでいるアレルギー疾患に焦点を当てて研究を行うことは、その成果を社会に広く還元させられることにつながると考えています。

アレルギー性炎症の主体は2型炎症反応です。2型炎症反応ではIL-4、IL-5、IL-13といった2型サイトカインが中心的な役割を果たしています。我々は、2型サイトカインであるIL-4IL-13のシグナル伝達機構、つまりこれらのサイトカインの細胞に対する作用についての解析を切り口として、基礎研究を展開してきました。主に、IL-4、あるいはIL-13の誘導産物を解析することにより、アレルギー疾患における新規の発症機序の解明を目指してきました。そして、それにより得られた知見を臨床応用に結びつけようとしています。つまり、アレルギー研究におけるトランスレーショナルリサーチを行ってきました。その結果、IL-4、あるいはIL-13の誘導産物のいくつかが、アレルギー疾患における診断薬、あるいは治療薬の標的となることをこれまでに見出し、その実用化を現在進めています。

プレシジョン・メディシンとは、「患者の病態を精密に分類し, それに適合した治療法を選択する医療」を意味し、2015年1月にアメリカのオバマ大統領が提唱した後、世界的に今後の医療の目指すべき姿として捉えられています。これまで別個に提唱されてきた個別化医療、オーダーメイド医療、テーラーメイド医療、ゲノム医療、層別化医療などの概念を含んでいると考えられます。喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患は、現在では一つの疾患ではなく、いくつかのサブグループから構成される症候群だと考えられています。サブグループによって治療への反応性が異なることも考えられ、そのサブグループ化の確立は、患者さんに対する治療方針の決定に重要となります。私達は、アレルギー疾患をサブグループ化するためのバイオマーカーを開発し、それを提供することで、アレルギー疾患におけるプレシジョン・メディシンの確立への貢献を目指しています。この目的のためには、臨床グループや企業との連携が必須となります。我々は、国内外の50以上の臨床グループと連携して研究を進めています。

これまで研究室で進めてきたプロジェクトのまとめ

  1. アレルギー疾患の遺伝要因の同定
  2. マトリックスタンパク質による炎症惹起
  3. 陰イオンによる炎症反応の惹起
  4. アレルギー疾患におけるプレシジョン・メディシンの確立
  5. 新規アトピー性皮膚炎マウスの樹立