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南アフリカでの実習指導奮闘記

我ら国境なき臨床化学者たち 4

ウルグアイ、グアテマラ、マレーシアに引き続いての4回目のIFCCのC-CMBC 活動は、2013年7月に南アフリカのケープタウンで行われました(図1)。日本では記録的な猛暑と言われている中を、冬支度での旅行でした。現地までの道のりは長く、ドバイ経由の空路で20時間以上かかります。真冬といってもそれほど寒くはなく、最低気温は摂氏10度くらいです。昼間だと20度くらいまで上がって過ごしやすい気候でした(写真1, 2)。

図1 今回のコースのポスター(クリックするとPDF(245KB)が開きます)

講師のメンバーは、これまでと同様にMichael Neumaier教授(ハイデルベルグ大学マンハイム校、ドイツ)、Parviz Ahmad-Nejad教授(Heliosヴッパータール臨床研究所、ドイツ)、Evi Lianidou教授(アテネ大学、ギリシャ)、Andrea Ferreira-Gonzalez教授(バージニアコモンウェルス大学、アメリカ)、私の5名の予定でした。しかし、直前に委員長であるNeumaier教授が、お母さんのご病気のため出席を取り止められました。また、前年度のマレーシアでのコースで選ばれた受講生が参加する予定でしたが、理由は不明なまま不参加となりました。さらに、私自身、すでに予定が入っていたため、コース自体は2日間のみ、南アフリカでの滞在も5日間のみでした。こうしたアクシデントがあると(2年前のグアテマラの際に起こりました)、以前だとあたふたと慌てていましたが、もうお互いに慣れたもので、講義や実習の担当を再び淡々と割り振って対応していきました。場所はケープタウン市内にあるTygerberg Hospitalでした。ここはケープタウン市内にある二つの医学部の内、片方に隣接したいわば大学病院です。受講生の数は例年より少なめで13名でした。受講生の多くは、病院、大学、研究所に勤務している医師、研究者、技師、大学院生などが占めていました。また、わざわざナイジェリアからの参加者もいました。コースの内容もこれまで通りに5日間でした。実習では、例年通り、自分達の血液からのDNA調整、それを用いた基本的なPCR操作、用意した試料を用いてのアレル特異的RFLPとPCRの実施、in silicoでのプライマーデザインとシークエンス確認を行っています(写真3, 4)。これに加えて、遺伝病とその診断、分子腫瘍学、ファーマコゲノミックス、分子微生物学、分子生物学の先端技術などについて講義しています(写真5)。

南アフリカでのコースの特徴と言えば、受講者に白人と黒人が混在していることでした。南アフリカの人種問題に関しては皆さんご存知のことと思いますが、実際、今回のようなコースでは一体どちらが中心なのかと思っていたところ、おおよそ半々でした。彼らは、人種問題の過去や現在の状況についても実にフランクに話してくれ、受講生の間でも少なくとも表面的にはこれについては何の問題も感じられませんでした。また、マンデラ大統領がいかに偉大であるかを語ってくれ、彼の健康を非常に心配していました。今回は、コースの最後まで見届けることができませんでしたが、Eviから今回も成功に終わったよと連絡がありました。来年は、いよいよ任期の最後の年です。総仕上げのコースとなる予定です。

(平成25年9月記)