Department of Biomolecular Sciences |
第82回分子生命科学セミナー
「難病ゲノム解析:到達点とその先へ」 松本 直通 教授 横浜市立大学大学院 医学研究科 遺伝学 日時:5月12日(木)18:00 - 19:00 場所:臨床小講堂(3114室) WebExによる配信も行います 事前登録は必要ありません。URLは後日お知らせします。 2010年に次世代シーケンサー(NGS)を用いた初めてのヒト遺伝性疾患の原因解明以降、NGSを用いたメンデル遺伝性疾患の原因解明が爆発的に進行している。既に全エクソームシーケンス(Whole Exome Sequencing, WES)は、様々な遺伝性疾患の原因解明の第一選択技術となっている。我々は、2009年よりWESを開始し、これまでに17,242サンプル(9,707症例を含む)のWES解析を進めた。そして76種類の疾患の原因について明らかにした。解析対象は多岐にわたる様々なヒト遺伝性疾患や神経難病あるいは未診断疾患等で、様々な解析手法を用いて原因解明を試みている。2021年3月末時点で、独立した8,458例の解析において2,779例(32.9%)で遺伝的な原因が解明されている。これは、WESを使用することで初めて可能になった成果であるが、一方で67.1%の症例では、原因を特定できておらず、これらの未解明症例にどの様に対応していくのかが大きな課題である。近年登場したロングリードシーケンス技術は、そのシーケンス精度の向上と高出力化によって、ようやくヒトゲノム解析が出来るレベルに到達、我々も2015年よりロングリードシーケンス技術を用いたヒトゲノム解析を開始した。ロングリードシーケンスの特徴は、まず第一に15 Kb以上を超える1リード長にあり、従来のショートリードシーケンスでは解析が不可能であった、ヒトゲノムの半分を占める反復配列領域等の解析を可能にした点である。特にヒトリピート病のリピート伸長領域の解析や、ゲノムの複雑構造異常解析に、極めて有効である。本講演では、難病ゲノム解析の現状と今後の展望について紹介する。 セミナーに関する問い合わせ
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