第81回分子生命科学セミナー/大学院特別講義

 

「iPS細胞技術によるがん細胞の理解と制御」

山 田 泰 広 教授

東京大学 医科学研究所
システム疾患モデル研究センター 先進病態モデル研究分野

日時:11月11日(月)18:00 - 19:00

場所:臨床小講堂(3113室)

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立過程では、DNAメチル化などのエピジェネティック修飾状態がダイナミックに変化することが知られる。我々は、iPS細胞作製技術を細胞のエピゲノム制御状態を積極的に改変するツールとして捉え、がん細胞に応用することで、遺伝子変異を有するがん細胞のエピゲノム制御状態を変化させ、がん細胞の運命制御の可能性を検討している。特にがん細胞からのiPS細胞樹立を試みるとともに、樹立されたがん細胞由来iPS細胞に分化を誘導することで、細胞分化に関わるエピゲノム制御ががん細胞の運命にどのような影響を及ぼすかを明らかにしようとしている。
不完全初期化に続発する腎臓がんモデルの腎臓がん細胞や明細胞肉腫モデルの肉腫細胞に細胞初期化因子を誘導することで、iPS細胞様の細胞株を樹立した。樹立されたiPS細胞様細胞株は、奇形腫形成、キメラマウスへの寄与が可能であり、多能性を有することが示された。がん細胞の遺伝子配列情報を持つ多能性幹細胞の樹立が可能であった。本セミナーでは、がん細胞由来iPS細胞の再分化の結果を示し、細胞分化に関わるエピゲノム制御と発がんの接点について議論する。

 

参考文献


Komura S et al. Nature Commun. (2019)          Terada Y, et al. Cell Reports (2019)
Shibata H, et al. Nature Commun. (2018)         Yagi M, et al. Nature (2017)
Hashimoto K, et al. PNAS (2017)                      Taguchi J, et al. Cell Stem Cell(2017)
Ohnishi K, et al. Cell (2014)

セミナーに関する問い合わせ:分子生命科学講座 副島英伸(内線2260)

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