第72回分子生命科学セミナー/大学院特別講義



演題

どのようにして新しいホルモンを見つけるのか?
摂食亢進ホルモン “グレリン” を例として


演者:児島 将康
久留米大学分子生命科学研究所遺伝情報研究部門 教授

日時:平成27年11月9日(月)17:30〜18:30
場所:臨床小講堂3113室


要旨

 グレリンはわたしたちが1999年に、胃の抽出物から見つけた摂食亢進作用を示すペプチド・ホルモンで、次のような特徴があります。
1、 グレリンの基本的な構造はヒトでは28個のアミノ酸からなるペプチドで、脂肪酸の一種であるオクタン酸によって修飾されています。またこの脂肪酸の修飾がないと活性を示しません。つまりタンパク質と脂肪が合体してはじめて活性を持ちます。グレリンは、ほ乳類だけでなく、脊椎動物全部に存在します。
2、グレリンはおもに胃で合成され、血中に分泌され、下垂体に作用して成長ホルモンの分泌を刺激します。つまり、胃は食物の消化という機能がメインと考えられていたのですが、成長ホルモンの分泌を調節するという重要な役割もあったわけです。またグレリンには食欲を亢進させる作用があります。
 最近の研究によって、グレリンは摂食亢進作用だけでなく、エネルギー消費抑制や代謝活動の抑制作用によって、総合的に生体内にエネルギーを貯蔵するホルモンであることがわかってきました。おそらくグレリンは生物にとって飢餓に備えるための生存ホルモンであると考えられます。
 本セミナーでは、グレリンの発見に至る経緯から、グレリンの最新の研究までを紹介したいと思います。


セミナーに関する問い合わせ:
分子生命科学講座 副島英伸(内線2260)

セミナー一覧に戻る

分子生命科学トップに戻る