第71回分子生命科学セミナー/大学院特別講義



演題

エピゲノム異常による消化器癌の誘導


演者:金田 篤志
千葉大学大学院医学研究院分子腫瘍学 教授

日時:平成27年6月9日(金)18:00〜19:00
場所:臨床小講堂3113室


要旨

 IGF2インプリンティング消失など、エピゲノム異常は原因として発癌に関わり、その標的治療が可能である。それゆえ癌症例はエピゲノム異常特性により分類し、各サブタイプで発癌機構やエピゲノム異常の原因を解明することが重要である。実際癌症例は、ゲノム網羅的に取得した分子異常情報により層別可能である。
 大腸癌は大きく3群のサブタイプに分類される。マイクロサテライト不安定性やBRAF変異(+)を特徴とする高メチル化大腸癌は、同じ特徴を持つ鋸歯状腺腫が前癌病変と考えられ、MLH1メチル化や他のミスマッチ修復遺伝子の異常により高頻度な遺伝子変異を獲得する。中メチル化大腸癌はKRAS変異(+)と、低メチル化大腸癌はBRAF変異(-)/KRAS変異(-)とそれぞれ強く相関し、これらの特徴を持つ大腸早期病変も同定され、少なくとも3つの大腸発癌機構が存在する。胃癌も大きく3群のエピジェノタイプから成る。低メチル化胃癌は異常メチル化があまりなく、染色体不安定性が高い。高メチル化胃癌は、MLH1メチル化を伴い、遺伝子変異も高頻度である。超高メチル化胃癌は、染色体不安定性や遺伝子変異をほとんど認めず、全例がEBウィルス陽性胃癌であり、in vitro EBV感染により短期間で超高メチル化が誘導されることから、ピロリ菌感染とは異なる特異な胃発癌経路と考えられる。


セミナーに関する問い合わせ:
分子生命科学講座 副島英伸(内線2260)

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