第70回分子生命科学セミナー/大学院特別講義



演題

自然リンパ球と炎症:ナチュラルヘルパー細胞(ILC2)を中心に


演者:小安 重夫
理化学研究所 統合生命医科学研究センター長

日時:平成27年1月9日(金)17:30〜18:30
場所:臨床小講堂3114室


要旨

  最近の研究から、ヘルパーT細胞サブセット(Th1、Th2、Th17)に対応する、自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC)が次々を発見され、感染や炎症における役割が明らかにされつつある。我々は、腸間膜に代表される脂肪組織中に、これまでに報告のないリンパ球集積を発見し、この組織をFALC (fat-associated lymphoid cluster) と名付け、さらにFALC中に大量の2型サイトカインを発現する細胞集団を見いだした。この細胞がIL-2によって増殖し、IL-5, IL-6, IL-13などの2型サイトカインを恒常的に発現する特徴を持つことから、ナチュラルヘルパー(Natural Helper: NH)細胞と名付け、この細胞が寄生虫感染における自然免疫反応を司る細胞であることやNH細胞が様々な2型の炎症に関わることを示してきた。現在では、ILCは産生するサイトカインのパターンによってヘルパーT細胞サブセットと同様に3つのグループに分類され、NH細胞は2番目のグループの細胞としてILC2と呼ばれるようになった。このセミナーでは、NH細胞と炎症との関わりに関し、最近の知見も含めて紹介するとともに、最近盛んになった自然リンパ球研究についても概観したい。

参考文献

Nature 463(7280): 540-544, 2010
Nat Rev Immunol 13(2): 145-149, 2013
Nat Commun 4: 2675, 2013


セミナーに関する問い合わせ:
分子生命科学講座 出原賢治 (内線2261)

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