第54回分子生命科学セミナー/大学院特別講義


演題

「がんの統合的ゲノム・エピゲノム解析」


演者:井本 逸勢
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
人類遺伝学分野 教授  


日時:平成22年11月29日(月)17:30〜18:30
場所:3113室(臨床小講堂1)


要旨

 がんは、多くの遺伝子に異常が生じこれらが蓄積することによって発生・進展していく病気です。このため、今世紀初頭にヒトゲノム配列が明らかにされて、ゲノム情報を基盤にがんの発生や悪性形質獲得にかかわる遺伝子を明らかにし、新しい診断、治療、予防法などの開発研究や基礎研究で得られた成果を臨床医学に橋渡ししていく研究に多大な期待が寄せられています。現在、次世代シーケンサーとITの利用といった技術面での進展とこれらを用いたがんゲノム解析の国際協調型大規模プロジェクトの進行が、がんの遺伝子異常解析研究とその臨床応用に対するさらに強い推進力として働いています。 私たちは、様々ながんのゲノム一次構造に生じた変化をアレイ技術を基盤に検出し、エピゲノム遺伝子制御機構、体系的遺伝子発現解析などの結果とともに統合的に解析することで、がん関連遺伝子探索ならびに各遺伝子異常の病態との関連性解明を行ってきました。ゲノム異常の検出にはじまり臨床・病理学的ならびに生物学的エビデンス獲得に至るまで明らかにすることで、がん関連遺伝子として妥当なものをひとつひとつリスト化していくアプローチを展開してきました。成果の中には、cIAP1、GASC1、PPM1Dといったその後の分子標的薬開発のターゲットになった遺伝子や、診断のマーカーになる可能性のあるDNAメチル化標的遺伝子が含まれています。本セミナーでは、これらの私たちのこれまでの取り組みの成果の一部について紹介するとともに、今後の本領域でのビッグバンにつながる新たな技術についても概観したいと考えています。



セミナーに関する問い合わせ:分子生命科学講座 副島 英伸(内線2260)

 

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