第36回分子生命科学セミナー/大学院特別講義

演題

アレルギー性気道炎症におけるIL-17ファミリーサイトカインの役割


演者:中島裕史
千葉大学大学院医学研究院
遺伝子制御学講座 教授


日時:平成19年9月7日(金)17:30〜18:30
場所:臨床小講堂2(3114室)


要旨

 アレルギー性気道炎症は、Th2細胞、好酸球、好中球、肥満細胞、好塩基球など炎症局所へ浸潤した血球系細胞と、血管内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞など組織構築細胞との複雑な相互作用により惹起される。Th2細胞は、IL-4、IL-5、IL-13などのサイトカインを産生し、IgE産生、好酸球の活性化、気道上皮細胞からの粘液やケモカインの産生、血管内皮細胞上の接着分子の発現の誘導により、アレルギー性気道炎症の惹起に中心的な役割を果たしている。
  近年、新たなTh2細胞サイトカインとしてIL-17ファミリーに属するIL-25が同定され、IL-25は未同定の非T非B細胞に作用し、IL-4, IL-5, IL-13等のTh2サイトカインの産生を誘導することが示された。さらに我々は、アレルギー性気道炎症におけるIL-25の役割を解析し、IL-25がCD4陽性T細胞依存的にアレルギー性気道炎症を増悪させることを明らかにした。
  重症喘息では、Th2型のアレルギー性気道炎症に加え、好中球性気道炎症の関与とIL-17の産生亢進が報告されている。これらの報告は、近年、自己免疫疾患への関与が示唆されているIL-17産生CD4陽性T細胞(Th17細胞)の喘息の重症化への関与の可能性を示唆している。我々は、Th17細胞の生存維持に重要なIL-23を肺特異的に発現するマウスを作製し、アレルギー性気道炎症におけるTh17細胞の役割を解析した。その結果、Th17細胞は、アレルギー性炎症における好中球性炎症の惹起に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
  本セミナーでは、IL-25及びIL-17に関する我々の研究結果を提示し、アレルギー性気道炎症誘導機構におけるIL-17ファミリーサイトカインの役割について議論したい。


セミナーに関する問い合わせ:分子生命科学講座 出原賢治(内線2291)

 

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