Department of Biomolecular Sciences |
第34回分子生命科学セミナー/大学院特別講義演題 原爆後障害としての固形がん研究の現状
広島・長崎の原爆投下以来60年が経過した。被爆者の約48%は生存中であり、固形がん罹患率は対照群と比較して今もなお高い。我々は被爆者重複がんの罹患率と被爆距離との相関を解析し、近距離被爆群での重複がん罹患の有意な上昇は被爆後30年以上経過後に始まり、現在まで増加が持続していることを見出した [投稿中]。これは若年被爆者が放射線曝露から60年経過してがん好発年齢に到達した現在、多様ながんを罹患する危険の高いことを意味している。「何故被爆者において固形がん罹患の上昇が数十年も続くのか?」、その分子機構は未だ解明されておらず、原爆後障害研究の最大の難問と言える。甲状腺癌は放射線被曝との因果関係のある代表的固形がんとして知られる。我々は放射線関連甲状腺癌でCyclinD1の過剰発現のみられることを報告したが[Meirmanov, et al., Thyroid (2003), Nakashima, et al., J Pathol (2004), Lantsov, et al., Histopathology (2005)]、その病理学的特異性は不明である。他の放射線誘発腫瘍にも特異的刻印(radiation signature)は現在まで同定されていない。
セミナーに関する問い合わせ:病因病態科学講座 戸田修二(内線2233)
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