第28回分子生命科学セミナー

演題:自然免疫システム作動の分子機構

演者:渋谷 彰
(筑波大学大学院人間総合科学研究科 基礎医学系免疫学 教授)

日時:平成16年11月12日(金)17:30〜18:30
場所:臨床小講堂2 (3114)

内容

 Tリンパ球やBリンパ球に発現する抗原受容体は多様性を特徴とする。これは抗原受容体遺伝子のランダムな組み換えによって成立し、抗原特異的リンパ球のクローン増殖とその結果としての記憶リンパ球の生成とともに、ヒトなどを含む高等動物における免疫システムを特徴づけている。
  一方、高等動物のみならず植物までも含めたほとんどすべての多細胞生物は、自然免疫と呼ばれる最も基本的な生体防御機構を有している。自然免疫は顆粒球やマクロファージ、樹状細胞などの食細胞やNK細胞、肥満細胞などの多種多様な免疫細胞のほか、補体、自然抗体などの液性蛋白などによって担われる。近年、自然免疫をになう免疫細胞による抗原認識機構と活性化制御機構の研究が著しく進展してきた。パターン認識により免疫応答が誘導される自然免疫システムでは、自己の組織傷害の危険がつねに存在することから、免疫細胞の活性化の厳密なコントロールによるホメオスターシス維持機構がなければならない。食細胞やNK細胞では活性化シグナルを伝達する活性化レセプターのほか、活性化抑制シグナルを伝える抑制性レセプターも明らかにされてきた。
  本講演では、食細胞やNK細胞の活性化を制御する免疫系受容体について最近の知見を概説するとともに、我々が同定した自然免疫に関与するいくつかの免疫系受容体分子の構造と機能についても紹介したい。

参考文献

1. Shibuya K., et al. J Exp Med, 198:1829-1839, 2003
2. Yotsumoto K., et al. J Exp Med 198:223-233, 2003
3. Shibuya A. Int J Hematol, 78:1-6, 2003
4. Shibuya A, et al. Nature Immunol 1:441-446, 2000
5. Shibuya K, et al. Immunity 11:615-623, 1999

セミナーに関する問い合わせ:分子生命科学 出原(内線2261)

 

セミナー一覧に戻る

分子生命科学トップに戻る