Department of Biomolecular Sciences |
第66回分子生命科学セミナー/大学院特別講義
媒介節足動物から眺める寄生虫感染症のバイオロジー マラリアという病気は、蚊によって伝わることは誰でも知っている。それは時によって“吸血時の物理的な接触によって病原体がうつる”と誤解されていることが多い。しかし実際には、マラリア原虫などの病原体は、それを運ぶ節足動物の体内における固有のライフサイクルを持っており、その体内での増殖・分化の過程を経て、次の宿主へと媒介される。興味深いことに、節足動物自身は病気になることはなく、“病原体を運搬するカーゴ”としてのみ機能している。節足動物によって媒介される感染症には、マラリアの他に西ナイル熱・日本脳炎・フィラリアなどがあり、依然として世界的に大きな問題となっている。その傍ら、この節足動物を介した病原体のライフサイクルは、遙か昔から保存されてきたものであり、その媒体である節足動物自身も多様な生命現象の宝庫である。
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