第66回分子生命科学セミナー/大学院特別講義


演題

媒介節足動物から眺める寄生虫感染症のバイオロジー


演者:嘉糠 洋陸
東京慈恵会医科大学医学部 熱帯医学講座 教授

日時:平成25年6月18日(火)18:00〜19:30
場所:臨床小講堂3114室


要旨

 マラリアという病気は、蚊によって伝わることは誰でも知っている。それは時によって“吸血時の物理的な接触によって病原体がうつる”と誤解されていることが多い。しかし実際には、マラリア原虫などの病原体は、それを運ぶ節足動物の体内における固有のライフサイクルを持っており、その体内での増殖・分化の過程を経て、次の宿主へと媒介される。興味深いことに、節足動物自身は病気になることはなく、“病原体を運搬するカーゴ”としてのみ機能している。節足動物によって媒介される感染症には、マラリアの他に西ナイル熱・日本脳炎・フィラリアなどがあり、依然として世界的に大きな問題となっている。その傍ら、この節足動物を介した病原体のライフサイクルは、遙か昔から保存されてきたものであり、その媒体である節足動物自身も多様な生命現象の宝庫である。
 我々は、ハマダラカ、ヤブカ、マダニ、ノミ、サシガメ、甲虫などを研究対象に、病原体ー媒介節足動物間相互作用から、遺伝子診断技術の応用開発にいたるまで、幅広く研究を進めている。これらのモデル生物を軸に据えた我々の最新の知見を紹介したい。

 

セミナーに関する問い合わせ:
分子生命科学講座 吉田裕樹 (内線2290)

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