Department of Biomolecular Sciences |
第63回分子生命科学セミナー/大学院特別講義
骨リモデリングの制御機構 骨リモデリングは、骨表面に存在する破骨細胞と骨芽細胞による連関した制御システムであり、破骨細胞が骨を吸収することにより開始され、破壊された部分を骨芽細胞が新生骨により充填すると考えられているが、その詳細はいまだ不明な点が多い。破骨細胞はRANKLにより分化誘導されることから、その細胞内シグナル伝達機構は、分化メカニズムの解明と治療標的の同定という両方の意味で注目を集めている。RANKL-NFATc1経路が破骨細胞分化を厳密に制御していることが明らかにされてきたが、骨組織において、どの様な細胞が破骨細胞の分化を支持しているかはこれまで不明であった。 骨組織におけるRANKL発現細胞を解析した結果、これまでRANKLの供給細胞と想定されていた骨芽細胞や骨髄ストローマ細胞より、骨に埋め込まれた骨細胞が強力にRANKLを発現し、破骨細胞を支持する能力も他の細胞に比べ優れていることが明らかになった。さらに骨細胞特異的RANKL欠損マウスは、歯芽萌出や成長に影響は見られないが、重篤な大理石骨病を呈した。すなわち、成体において骨細胞が破骨細胞の分化を支持し、骨リモデリングの開始を司っていると考えられる(1)。 参考文献 1) Nakashima T, Hayashi M, Fukunaga T, Kurata K, Oh-hora M, Feng JQ, Bonewald LF, Kodama T, Wutz A, Wagner EF, Penninger JM and Takayanagi H. Evidence for osteocyte regulation of bone homeostasis through RANKL expression. Nat Med 17, 1231-4 (2011) セミナーに関する問い合わせ: |