第42回分子生命科学セミナー/大学院特別講義

 

演題

IL-18とスーパーTh1型アレルギー炎症


演者:中西 憲司
兵庫医科大学 免疫学・医動物学 教授



日時:平成20年12月24日(水)17:00〜18:00
場所:研究棟2424室


要旨

 従来、アレルギー性炎症はTh2/IgE応答に基づく疾患と考えられてきた。ところが私達は、Th1/IL-18依存性のアレルギー性炎症が存在し、更にこれが「自然型」と「感染増悪型」に大別されることを示してきた。本講演において、我々が樹立した「気管支喘息」と「アトピー性皮膚炎」モデルを用い、スーパーTh1細胞の病態形成能、並びにその制御法を紹介する。

「気管支喘息」
Th1細胞は抗原刺激を受けるとIFN-γを産生する。ところが、抗原+IL-2+IL-18刺激を受けると、IFN-γとともに、気管支喘息の原因となるIL-13、更にIL-3、GM-CSF、RANTESなどを産生する。この様なTh1とTh2サイトカインを同時に産生する細胞をスーパーTh1細胞と呼ぶ。私達は、OVA特異的メモリーTh1細胞を有するマウスに、経鼻的にOVAとIL-18を同時投与すると、スーパーTh1細胞が誘導され、気道過敏性の亢進(AHR)、気管支周囲の好酸球浸潤、そして肺の線維化が誘導されることを明らかにした。またIFN-γが原因でAHRが、IL-13が原因で肺繊維化が起こることも示した。更に、OVA+IL-18のかわりに、OVA+ LPSを経鼻投与すると、内因性のIL-18産生が原因でAHRが誘導され、抗IL-18抗体でIL-18を中和すると、AHRが抑制されることも示した。

「アトピー性皮膚炎」
黄色ブドウ球菌(S. aureus)感染はアトピー性皮膚炎(AD)を増悪させる。S. aureus由来のprotein A(SpA)はケラチノサイトを刺激してIL-18の産生を誘導する。そこで、SDS処理で皮膚バリア機能を低下させたマウス(BALB/c、C57BL/6、NC/Nga)の皮膚に、SpAを連日塗布した。得られた皮膚炎の重症度は、AD好発性マウスのNC/Ngaで高く、BALB/c、次にC57BL/6であった。血清IgE値は低値、しかし血清IL-18とヒスタミン値は高値であった。IL-18中和によって、AD発症は抑制された。本研究から、局所の微生物感染で誘導されたIL-18が、アレルギー性炎症を誘導することが明らかとなった。




セミナーに関する問い合わせ:分子生命科学講座 木本雅夫(内線2255)

 

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