佐賀大学医学部 分子遺伝学エピジェネティクス分野

「ゲノムインプリンティングの制御と疾患発症機構の研究」ご協力のお願い

インプリンティング疾患の遺伝子解析について

ゲノムインプリンティングとは、父由来遺伝子と母由来遺伝子のうち、一方のアレルが選択的に発現する現象で、インプリント遺伝子の発現異常はインプリンティング疾患の原因となります(表1)。インプリンティング疾患の疾患座位では複数のインプリント遺伝子がドメインを形成しており、遺伝子発現はインプリンティング制御領域(ICR)によってシスに制御されています。Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)は、代表的なインプリンティング疾患で、過成長、巨舌、臍帯ヘルニア、新生児低血糖、片側肥大などの多様な症状を呈することに加え、Wilms腫瘍、肝芽腫、神経芽腫などの胎児性腫瘍を発生することが知られています。疾患座位11p15.5にはCDKN1C/KCNQ1OT1IGF2/H19の二つのインプリンティングドメインがあり、それぞれKvDMR1、H19DMRと呼ばれるICRによりドメイン内の遺伝子発現が制御されています。BWSの主要な原因には、KvDMR1低メチル化、H19DMR高メチル化、父性片親性ダイソミー、CDKN1Cの機能喪失変異、11p15の染色体構造異常があります。異常のタイプ別に腫瘍発生リスクが異なるため、遺伝子解析を行って異常のタイプを明らかにすることは診療上重要です。一方、Silver-Russell症候群(SRS)は、出生前後の成長障害、相対的頭囲拡大、前額部突出、左右の非対称性など、BWSと逆の表現型を示すインプリンティング疾患です。メチル化異常もBWSの逆で、多くのSRS症例でH19DMR低メチル化が認められます。また、7番染色体の母性片親性ダイソミーも原因の一つです。
私たちの研究室では、ゲノムインプリンティングの分子機構解明のため、様々な観点から研究を進めています。その一環として、BWSの遺伝子解析(DNAメチル化解析、片親性ダイソミー解析、コピー数解析、遺伝子変異解析等)を有償で行っています。原則としてトリオ解析を行い、費用は5万円(税込み)です。詳細については下記の問い合わせ先までご連絡ください。

表1 インプリンティング疾患

疾患名 OMIM 疾患座位 難病情報センターURL 小児慢性特定疾病情報センターURL
Beckwith-Wiedemann症候群(BWS) #130650 11p15.5 http://www.nanbyou.or.jp/entry/3291 https://www.shouman.jp/disease/details/13_01_008/
Silver-Russell症候群(SRS) #180860 11p15.5, Chr7 http://www.nanbyou.or.jp/entry/3292
Prader-Willi症候群(PWS) #176270 15q11-q13 http://www.nanbyou.or.jp/entry/4768 https://www.shouman.jp/disease/details/05_43_092/
Angelman症候群(AS) #105830 15q11-q13 http://www.nanbyou.or.jp/entry/4771 https://www.shouman.jp/disease/details/13_01_009/
Kagami-Ogata症候群(KOS) #608149 14q32.2 http://www.nanbyou.or.jp/entry/4687
Temple症候群(TS) #616222 14q32.2 http://www.nanbyou.or.jp/entry/2406
新生児一過性糖尿病1型(TNDM1) #601410 6q24 http://www.nanbyou.or.jp/entry/752 https://www.shouman.jp/disease/details/07_01_004/
偽性副甲状腺機能低下症1b型(PHP1b) #603233 20q13.32 http://www.nanbyou.or.jp/entry/72 https://www.shouman.jp/disease/details/05_17_032/

遺伝子解析に関する問い合わせ先

〒849-8501
佐賀市鍋島5−1−1
佐賀大学医学部分子生命科学講座
分子遺伝学・エピジェネティクス分野
bwsh21(at)ml.cc.saga-u.ac.jp